2017年11月04日

刑法の一部改正(性犯罪)について

 平成29年6月16日,刑法の一部を改正する法律案が国会で可決成立し,同年7月13日から施行されています。改正された内容は,性犯罪に関するもので,性犯罪に対する重罰化という社会の要請に応えたものになります。
 
 主な改正点は,次の3点です。
(1)強姦罪という犯罪を廃止して,「強制性交等罪」というあらたな犯罪としたこと
 強姦罪は,「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫」する犯罪でした。そして,刑法は,強姦罪について,「3年以上の有期懲役に処する。」と規定していました。
 今回の改正では,「13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて,性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)」をする犯罪にあらため,これを「強制性交等罪」という名称にしました。そして,刑法は,強制性交等罪について,「5年以上の有期懲役に処する。」と規定しました。
 具体的に,何が変わったかというと,まず,被害者の範囲が変わっています。強姦罪では「女子」が対象でしたが,強制性交等罪では「者」と改められています。したがって,今後は,男性も被害者になります。
 次に,行為態様が,「姦淫」から「性交等」に拡大されました。
 最後に,法定刑の下限が,「3年」から「5年」に引き上げられました。

(2)監護者による強制性交等罪というあらたな犯罪類型をもうけたこと
 18歳未満の者を監護する者が,その影響力があることに乗じて強制わいせつ,強制性交等をした場合には,強制わいせつ罪,強制性交等罪と同様に処罰されることになります。
 これまでは,女子の抗拒不能(物理的,心理的に抵抗が著しく困難な状態)に乗じて姦淫した者を「準強姦罪」として処罰していましたが,親から幼い頃より長期にわたって性的な虐待を受けている子は,親がそのようなことをするのが当然と感じて,およそ抗拒することを考えなくなってしまうことがあることから,準強姦罪では対応できない事例がありました。そこで,抗拒不能を要件としないあらたな犯罪類型をもうけたのです。

(3)強制性交等罪等を非親告罪としたこと
 これまで強制わいせつ罪や強姦罪は,被害者の告訴がなければ,公訴提起することができない「親告罪」とされてきました。したがって,検察が,公訴提起する前に被害者と示談をすることができ,被害者が告訴を取り下げれば,事件はその時点で終了ということになっていました。しかし,今回の改正では,被害者の告訴がなくても検察は,公訴提起することができるようになりました。もっとも,検察は,被害者の明確な意向に反した公訴提起をすることはないと思われます。今後変わりうるのは,告訴するかどうかの判断を留保している被害者のケースで,検察は,被害者の告訴がなくても,公訴提起する可能性が出てくるのではないかと思われます。
 また,強制性交等罪等が非親告罪化されても,被害者に対する誠実な対応をすべきであることは従来と変わりませんので,可能であれば,早急に被害者と示談交渉をするべきであろうと思われます。
posted by 大橋賢也 at 14:03| Comment(0) | 日記