2015年11月26日

刑事事件における分かりやすい主張・立証について

 11月23日(月)の産経新聞の朝刊に,刑事事件における弁護人の主張・立証について,興味深い記事が載っていました。端的に言うと,一般市民が参加する裁判員裁判における弁護人の主張・立証が,検察官に比べて分かりにくいので,研修会を実施した,という記事です。

 それでは,具体的に,弁護人の主張・立証は,どのような点で,裁判員に分かりにくいと評価されているのでしょうか。なお,「主張」とは,文字通り,弁護人の事件に対する意見のことを言い,「立証」とは,自分の主張が正しいことを証拠で裏付けることを言います。

 上記の記事によると,弁護人の主張・立証がなぜ分かりにくいかというと,それは,裁判員裁判の評議での刑の決め方とマッチしていないから,ということのようです。
 裁判員裁判の評議とは,全ての審理が終わった後に,職業裁判官3名と,裁判員6名(通常の裁判員裁判を前提にしています)が,非公開で行う議論のことです。非公開ですから,当然,その中で,どのようなやり取りがなされているのか,私たちには分かりませんし,裁判員にも守秘義務が課されていますから,裁判員経験者から,評議の内容について聞くこともできません。そのため,実際に評議がどのように進行されているのかは,私たちの重大な関心事になります。

 上記の研修会では,東京地裁の裁判官が参加し,一般から選ばれた裁判員役の人たちと一緒に,模擬評議を行ったそうです。しかも,模擬評議の内容が,研修会場に中継されたため,実際の評議の進め方が,弁護士にも明らかにされたという意味で,内容の濃い研修になったようです。

 中継された模擬評議では,まず,凶器の有無やけがの程度などの「犯情事実」から同種事件の中で軽いのか重いのかを判断して,量刑の大枠を検討し,その後,被告人の反省や前科の有無などの「一般情状事実」を考慮して,最終的な量刑を調整されたようです。

 「犯情事実」とは,犯罪行為及びこれに密接に関連する事実を言い,具体的には,@犯行が偶発的なものか,計画的なものなのか,A犯行態様が悪質か否か,B凶器を用いた場合は,凶器の殺傷能力の程度,C犯行結果が重大か否かなどがこれに当たります。
 「一般情状事実」とは,@被告人の年齢,A前科前歴の有無・内容,B反省の情,C更生可能性,D示談・被害弁償の有無など,犯情事実以外の事実がこれに当たります。

 ある裁判官によると,被告人が,罪を認めている自白事件の場合,一般情状事実ばかり主張し,犯情事実を主張しない弁護人が意外と多いとのことです(要は,被告人が反省しているだとか,被告人に前科がないということのみを主張するということです。)。この点で裁判員裁判の評議での刑の決め方とマッチしておらず,弁護人の主張・立証が分かりにくいと裁判員に受け止められているようです。

 私は,上記の研修会には出席しませんでしたが,産経新聞の記事を読んだことで,刑事事件における主張・立証の仕方について,認識を新たにすることができました。「犯情事実」→「一般情状事実」という流れは,裁判員裁判に限ったことではなく,通常の刑事裁判でも当てはまるものです。実際に自分が,そのような主張・立証ができているのかを早速確認してみたいと思います。
posted by 大橋賢也 at 17:10| Comment(0) | 日記
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